平成11年(ハ)46××号  損害賠償請求事件
原告 松 本 肇
被告 慶應義塾
平成11年(1999年)7月29日
原 告  松本 肇 
            

東京簡易裁判所 民事第2室1係B 御中

準 備 書 面

1 被告準備書面(二)(1999年7月23日)について
 被告は準備書面によって、「原告と被告との間の本学に関する『在学契約』において、原告と被告との間に如何なる権利義務の関係が存在し、その権利義務関係の中において、原告が指摘する『憲法』のレポートの添削・返却の遅れが被告の債務不履行を構成するか否か、という点が本件の争点というべきである。」(4頁)と述べており、原告もその点に争いはない。
 しかし、「本件においては、教育実施の過程における提出レポートの添削と返却が問題となっているが、そのこと自体は、右に述べた教育的裁量の範囲に属する問題であって、在学契約上の債務不履行を構成する余地はない。」(5頁)と述べている点は、どう考えても納得できない。

2 レポートの添削・返却がなされないことについて
 くどいようだが、被告はいい加減な法律用語を駆使し、無理を通そうとするきらいがあるので、再度述べる。
 大学という場所は、原告の認識としては、少なくとも学校である。学校という場所には勉強を教える「教員」がいる。この教員が学生に対して行うこと(義務)というのは、「学問を教えること」と「学生の理解度を評価すること」である。そして、常識で考えればわかる通り、この2つの義務は、ある適正な時間に行われなければならないものである。
 ふつう、大学の通学課程においては半年ないし1年間の授業を受け、そしてその習熟度を科目試験に基づいて審査されるのである。
 しかし、通信教育の課程においては、教員から直接講義を受けることができない代わりに、テキストを読んで学習し、レポートを作成し、提出する。そしてそのレポートは、一定レベルのものを作成することができるまで、繰り返しレポートを提出し、担当教員からの評価やコメントを頼りに、科目試験に臨むことができるのである。科目試験が受けられるからといって、レポート返却がベラボーに遅くなることは、どう考えても変である。(もしテキストそのものが大学
の授業というならば、もはやレポートによる評価など、全く意味をなさない)
 そして被告大学に在籍する学生は、在学期間内であれば何度でもレポートを提出し、添削のうえ返却してもらうことが可能であるはずなのである。
 被告大学の塩澤修平通信教育部長のコメント(慶應塾生新聞1999年5月10日発行、原告作成準備書面5月19日に添付)によれば、1ヶ月以内に返却されるのが通常とされている。それが本当ならば、1つの科目につき、習熟度が悪く、不合格の評価を受けたとしても、少なくとも年間7〜8回のレポート作成・添削・返却を受けることができる。ここで、1つの科目の1つのレポート返却に、半年から1年もの期間をかけることじたいが間違いであるし、学生にテキストを渡せば、それで大学側の授業を行う義務を履行したなどという主張は、「債務不履行」という法律用語の解釈をダラダラと述べただけの、本末転倒な行為である。

3 被告の反省について
 被告は、準備書面(二)(1999年7月23日)の7頁で、「本学において、一部の科目で、提出されたレポートの返却が遅れがみられることは事実である。被告は、本学運営上、一部の科目であってもレポート返却が遅れが見られることを遺憾としており、レポートの早期の添削・返却が行われるように種々の対策を講じてきたものであって、レポート返却の遅れを当然のこととして容認してきたものではなく、現在も適切な時期にレポートが返却されるように留意しているものである。(誤植が見られるが原文のママ)」と述べ、一連のお粗末な対応に反省をしているようにも見える。しかし、少なくとも原告が提出し、返却が遅れたレポートに対し、事務局側の努力は見えなかったし、謝罪らしき言葉を述べたのは当の憲法レポート添削担当者だけである。
 もし、本当にレポート返却に遅れが見られ、対策を講じているのであれば、原告は1999年3月29日に事務局に電話した際、女性事務局員に冷たくあしらわれずに済んだであろうし、種々の対策を講じてもらったであろう。
 ちなみに比較的歴史の浅い放送大学は、2学期制で、半年に1度の締切日までにレポート課題を提出した場合、きちんと科目試験の試験日までに返却され、科目試験を受ける上で、参考にすることができる。また、法政大学通信教育部は、原告の経験や調査によれば、遅くとも2ヶ月程度で返却され、万一怠惰な教員がいたとしても、9月や3月など、学期の節目となる時期には返却されると断言された(事務局員のコメント)。更に、中央大学に関しては通常、2週間程度で返却され、長くても1ヶ月で返却される(原告主催ホームページに寄せられた、学生の情報)という情報がある。これらの情報は、全て正しいか否か、それはわからないが、本気で対策を講じれば、ここまで添削をスピーディにすることは可能と思われる。

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