平成11年(ハ)46××号  損害賠償請求事件

原告 松 本 肇
被告 慶應義塾
平成11年(1999年)5月19日
(送達場所)  〒231-xxxx 神奈川県横浜市中区××××× 有限会社トライアル内
原 告  松本 肇 
TEL&FAX  045(×××)××××
携帯電話  090(××××)××××
            

準 備 書 面

 原告は、本訴訟において、早期の紛争解決と、より良い生涯学習の制度を実現するために、最大限の努力を行うつもりである。既に述べたが原告は法律実務に関しては素人である。法律の専門家である裁判所と被告(訴訟代理人)の胸を借りて、本訴訟を意義あるものとしたい。

1.被告が送付した答弁書について

(1)事実関係について
 原告は、1999年5月17日、被告訴訟代理人から答弁書を受け取った。レポートの返却状況に関し、原告が訴状で述べたことと、大筋で合致していることを認める。  原告が被告大学を除籍になった時期や経緯は、答弁書記載の通りであるが、原告が教育費等合計金78,000円を支払わなかった理由は「レポート返却をおざなりにしている大学に対し、こちら側だけが学費を支払うことは、常識的に考えても納得できなかったため」である。

(2)答弁書の感想
 原告は、このたび、生まれて初めて訴状を書いて裁判所へ提出した。そして被告大学の訴訟代理人から答弁書を受け取った。まるで訴状という名のレポート課題を、法律の専門家に添削してもらった気分である。この「訴状添削結果」に対し、感想を述べたい。

 [1]遅い
 原告が訴状を提出したのは1999年4月6日、被告に送達されたであろう日時は4月の第3
週である。1ヶ月もの時間を要して、B4原稿1枚である。しかも、原告が記載した請求の趣旨や原因に関して認否を答えただけで、「被告は、追って、被告大学の通信教育において、科目の単位取得におけるレポート提出(合否を含む)の役割等を主張し、原告の本訴請求が理由のない所以を主張する予定である。」と述べているだけである。
 そして東京簡易裁判所へ提出した日付は1999年5月10日で、第一回口頭弁論の10日前である。まるでどこかの大学の通信添削のように、卒業間際になって急いで作成したように見える。

 [2]いやらしい
 答弁書には「経営学のレポートの成績はD、不合格」と記載したのに、「会計学レポートの成績はB」、「商業学のレポートの成績はC」と、合格レポートに関し「合格」の文字を入れていない。不合格レポートに「不合格」と書いたら、合格レポートには「合格」と書いていただきたい。この答弁書を読んだ者に、「原告はアホだ」と印象づけるような書き方は極力避けていただきたい。(それとも「どうせ不合格だから遅くても早くても結果は同じ」とでも言いたいのだろうか。)

 [3]素早い紛争解決に協力する姿勢が見られない
 前述したが、「被告は、追って、被告大学の通信教育において、科目の単位取得におけるレポート提出(合否を含む)の役割等を主張し、原告の本訴請求が理由のない所以を主張する予定である。」という一言で、主張する内容や問題点を先のばしにしている。
 主張したいことや、どのような証拠があるのかを、なるべく早く開示することが、紛争の早期解決につながることは、素人である原告にでもわかることである。だからこそ、原告は訴状に「和解案」なるものまで記載したのである。本訴訟で、原告が裁判所へ納めたのは500円の収入印紙だけである。たった500円の手数料で、裁判官や書記官の皆さんを長期にわたって拘束するのは、ひどい税金の無駄遣いである。民事訴訟法が新しくなっても、こうした早期解決に向けて、我々訴訟当事者の心配りが必要であると考える。


2.被告が主張するのではないかと予想される事項の回答
 訴訟を長期化させないためにも、原告は「被告大学がこんな主張をするのではないか」と、予想される主張を考え、あらかじめ回答しておきたい。

(1)具体的な返却期限を定めてはいない
 被告大学通信教育部のパンフレットには、レポート提出から返却までのプロセスは書いてあるが、具体的な返却期日が記載されている訳ではない。だから履行遅滞ではない。
 ■原告→しかし、まさか半年以上待たされるとは思わなかった。10万円もの大金を支払って、「いつ返却されるかわかりません、具体的な期日を決めていないから文句言われる筋合いはありません」という理屈がまかり通る訳がない。

(2)憲法レポートが返却されなくても試験は受けられる
 他の大学通信教育とは違い、被告大学のシステムは、レポートを提出しさえすれば科目認定試験が受けられるのである。単位修得には「レポート合格」と「試験合格」が必要なので、試験の合格を先に受け、レポート合格が後になってもシステム上は問題ない。
 ■原告→それなら通信教育の意味がない。通信教育というのは、通信課題を出して、教員が添削することで理解度を深め、そして試験でその理解度を計るのが目的である。大学通信教育という名称を使っていて、通信添削をしなくても良いというのはおかしい。

(3)他にも多くの科目があるから、そちらからやれば良い
 原告の修得した単位は少ない。だから、まだまだ卒業に必要な科目はたくさんある。だから、憲法にこだわらず、他の科目を履修すれば良い。
 ■原告→それは考え方がかなりひねくれている。被告大学は、「配本(教科書の配布)された科目の中で、好きな科目を自由に選択してレポートを提出して良い」というシステムを採用しているのだから、選択した以上は、責任を持って返却してもらいたい。また、「他の科目を履修すれば良い」という言葉は、苦し紛れに言っているようにしか捉えることができない。

(4)これは大学の自治の問題だから司法権にはなじまない
 大学の教育方針を決定するのは大学の自治権の問題だから、裁判所での判断に任せるのはおかしい。
 ■原告→まさかこんなことを言って逃げるとは思えないが、憲法のレポートの問題なので、万一のことを考えて回答しておく。

 大学で、どの科目をどのように教えるのか、そして誰が教えるのかという問題について、大学側が決定することであり、司法権が及ばないであろうことは、私でも知っている。しかし、既に決定した方針「レポートを提出されたら添削して返却する」ということに、既に背いている訳だから、大学の自治云々という問題ではないと思う。

(5)レポート課題の9割は、ちゃんと1ヶ月以内に返却されている
 レポート課題の9割はきちんと処理されており、あとの1割は「たまたま」返却が遅れただけである。
 ■原告→訴訟提起後、慶應大学通信教育部の事務局に電話をすると、この回答が返ってくるそうである(原告ホームページを閲覧した者からの情報)。いやしくも法学部のある大学とは思えない回答である。仮に1割のレポートがこうした状況であるならば、「レポート返却が遅れないような対策をする」、「遅れた場合には、責任のある対応をする」のが、当然である。こうした問題は、しばしば会社経営者などに対して「使用者責任」という言葉で処理されるはずである。


3.原告の主張
 慶應義塾大学の通信教育におけるレポートの返却遅延は、債務不履行となるか否か。  これが、本訴訟の争点である。  しかし、小難しい法律用語などを持ち出さなくても、一般常識に当てはめれば、「被告はどこかがおかしい」とわかるはずである。それを、どのような法律用語を駆使しても、単純に、常識で考えればわかる。以下の(1)〜(3)は、原告の創作事例である。

(1)そば屋の出前
 ある日の午前11時、あるサラリーマンが近所のそば屋に電話して「中華そばとライス大盛り」を注文した。昼休みは12時から1時までなので、12時30分までに出前してくれればよいと思っていた。しかし、午後1時を過ぎても出前が来ない。そば屋に電話して苦情をいうと、店主はこう言った。
 「うちはピザ屋みたいに30分以内に出前するとは言っていないでしょ? うちは忙しいから、夕方にでも出前しようと思っていたんだ。 だいたい、出前してくれるだけありがたいと思いなさいよ。」

(2)何でも食い放題レストラン
 「前金で3,000円払うと90分の間、中華料理、焼肉、ステーキ、寿司が食い放題」という一流レストランがあった。この店は寿司が美味しいという評判なので、寿司を目当てに行った。3,000円を支払ったが、寿司が無いので店員に聞いたら「板前が忙しいので注文をしてお待ちください」と言われたので、にぎり寿司を1人前注文した。ところが、30分経過しても寿司が来ない。仕方がないので焼肉や中華をちょこちょこつまみ食いするが、やはりメインとして寿司を食べたい。90分経過したところで、店主を呼び出して苦情を言うと、彼はこう言った。
 「中華も焼肉もステーキもあるんだ。寿司が無くても他のを食えば腹は膨れるだろ? あ、そうそう、もう90分を過ぎたから、もう3,000円出せば寿司を食わせてやってもいいけど、払わなければ追い出すよ。」

(3)一流ゴルフ場
 あるところに「上会員」と「並会員」の2種類の会員システムを持つ一流ゴルフ場があった。
 上会員は年会費100万円を出せば、プロゴルファーが毎日指導をし、質問にも即座に答え、コンペの成績もきちんと管理されるというサービスがある。並会員は、年会費10万円で、自分のスイングなどを写真に撮って送れば、プロゴルファーが指摘してくれたり、数ヶ月に1度
のコンペの成績を管理してくれるサービスを持つ。
 上会員と並会員の違いは、プロゴルファーの指導が「毎日直接ある」か「写真の添削とコメントのみ」という点である。ところが、並会員がやっとの思いで撮影した写真が、いつまでたっても指導されないでいる。そこで、ゴルフ場の責任者に電話をして苦情を言おうとすると、並会員の友人たちは口々に言う。
 「しょせん並会員は、上会員の10分の1しかお金を出していないし、我々だってこの一流ゴルフ場でプレーできることを感謝しなくてはならない。もう少し待ってみたら?」

 仮に、上記(1)〜(3)の状況に巻き込まれた場合、このようなことを言われたら、誰もが理不尽に思うであろう。ところが、問題の店やゴルフ場が天下の慶應義塾大学に代わっただけで、金を支払ってサービスを受ける側の権利が蔑ろにされるのである。  これは法律論云々の問題ではない。金を払ったら予定された適切なサービスを受けられるという、最低限の社会のルールである。いったい、被告のどこに弁解の余地があろう。


4.添付資料について

(1)「元通教生が損害賠償請求」慶應塾生新聞第333号1999年5月10日発行第一面
 被告大学の塩澤修平通信教育部長は、「レポートは通常一カ月以内で返却されるが、ごく一部の教員に大変な遅れがあるのは事実」と述べており、レポートの返却期間は、「1カ月以内である」と明言した。原告は、訴状において「2ヶ月以内」という指針を示したが、被告が明言した期間は、この指針よりも1ヶ月短い期間である。すると、原告が提出したレポート4通は、その全てが履行遅滞であったことになる。
 しかし、2ヶ月程度で返却された経営学と会計学レポートについては、許容範囲内として捉え、争わないことにする。

(2)「マルチメディア時代の大学通信教育」グローバル・エデュ・ネット1997年5月号  (http://www.alc.co.jp/edunet/topics/97/edutop121.html以下)
 教育関係情報をホームページ上で提供するグローバル・エデュ・ネット(Global EduNet)のトピックスに、マルチメディアを大学通信教育にどのように取り入れるかなどが書かれた記事を見つけた。この記事には、被告大学法学部教授で前通信教育部長の池田眞朗教授が、とても興味深いコメントを述べている。おおよそ、次の通りである。
 「大学通信教育において、受講者はレポートの提出が義務づけられているが、このレポートの提出や添削結果の返却は全て郵送でやり取りされるため、答案や質疑に対するレスポンスに時間がかかり、学習意欲を維持する面でも支障になっている。」
 このコメントは、レポート提出などを電子メールで行うことの意義について述べたことであるため、本訴訟に直接の関係は無い。しかし、「レポート添削の遅延が、通信生にとって、意欲を無くすこと」について、被告大学は自覚している。
 つまり、被告が述べた「他の科目を先にやれば良い」という主張は、単なる言い逃れでしかないことは明白であると思われる。

5.今後の訴訟方針

 なるべく早い時期に、以下の証人を呼び、証人尋問を行いたい。
(1)原告が提出し、返却されなかった当該憲法(E)レポートの添削担当教員
(2)被告大学通信教育部の学生の苦情を受ける事務局の責任者
(3)被告大学の通信教育部長

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